ツインの絆

「孝輔、良いかい。ここに今月の領収書がある。これに打ち込んでくれないか。
ここから続けて打ってくれたらいいからね。
孝輔たちは早くからコンピューターを利用しているから助かるよ。

僕は和ちゃんや悟兄ちゃんに引きずられる形で一生懸命覚えた。
和ちゃんは小さいのにオモチャ感覚で、東京のおじさんとメールやコンピューター電話など早くから使っていたし、
悟兄ちゃんは亜矢可先生の古いコンピューターを貰って、毎日長時間会っているのに、
夜になると二人で、5歳の年齢差など関係無いようにコンピューター交信をしていた。

僕は戸惑いながら感心して、見たり聞いたりしていたよ。
そうしたら道子おばさんが、僕もコンピューターを覚えろ、と言って、
中学三年の誕生日にプレゼントしてくれた。

そんな高いものを… と親父も恐縮して辞退していたが、
これは広志に対する投資だから気にするな、と言われた。
もちろん、僕はすごく嬉しかった。今でも自分の部屋にあるよ。

孝輔たちは水木のおじいさんが買ってくれたのでしょ。
買う時に、僕がどんなものを持っているか見に来たよ。」



どうして広志さんに、あの道子おばさんが。


おばさんは、とび職人をしていた父を気に入ったから野崎組を作った、と聞いている。


だけど、僕達も父さんの息子なのに、昔からおばさんは和ちゃんしか見ていなかった。


僕はまともに話したことも無い。


母さんの葬式の後だけだ。


どうしてだろう。


もっとも、大輔はともかくこんな僕では… 


そこまで考えて孝輔は今の自分の立場を思い出し… 心が沈んで行く。


こんな僕を見れば、野崎の面汚しだ、と怒鳴り、追い出されるかも知れない。


どうしよう… どうしたら良いのだろう。


広志の話から道子おばの顔が浮かび、
いきなり絶望感に襲われ、胸が苦しくなってきた孝輔だ
< 113 / 205 >

この作品をシェア

pagetop