ツインの絆

亜矢可先生と言うのは、道子の娘で50歳になる敏腕弁護士だ。


早くから切れ者と噂され、高収入を得る弁護士として、その道では有名だ。


悟は今、亜矢可のグローバル・ローファーム名古屋事務所の弁護士として働いている。


東大の法学部時代は、丸の内にある東京事務所でアルバイトをしながら実践を学び、
なお且つ、事務所から勧められて、ハーバードのロー・スクールまで出ている。


そんな悟だから、今はほとんど海外の仕事をこなし名古屋にはいない。


そして亜矢可は、ゆくゆく悟に名古屋事務所を任せるつもりのようだ。


もっとも、まだ25歳だから公には誰も聞いていないが。


因みに悟は、野崎組の顧問弁護士として名前を入れている。


和也はコンサルタントだそうだ。


広志を初め、悟も和也も誰に頼まれたわけでもない。


勝手に肩書きを野崎の中に入れているだけだが、いざとなれば心強い存在になりそうだ。


もっとも、ただのとび職人の集りである野崎組に、そんな大層な肩書きは必要ないのだが… 




「ううっ… 」



昼食も済み、孝輔は再びゆっくりと領収書の打ち込みを始めていた。


広志は午前中からコンピューターで何かを検索している。


そして安城から戻って来た由樹は、二人にお茶を入れてから三階の掃除に行っている。


そんな時、いきなり孝輔は初めて感じる、あのキャンデーやコーラを求める異様な震えを覚え、体が熱くなり、渇きを覚えた。


初めは我慢していたが… いつの間にか声が出ていた。


そして孝輔の額にはべっとりと脂汗もが吹き出ている。



「孝輔、どうした。」



広志はそう言っているが、孝輔には駆け寄らず、
事務所の端に出来ているキッチンへ駆け込み、コップと水の入ったペットボトル、
それに氷の入ったボウルにタオルを持って来た。
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