ツインの絆

「僕は医者では無いから答えられないけど、でも孝輔はそんなに重症ではないよ。
重症患者なら耐え切れなくて、体が異様に震えて暴れまわる、と書いてあった。

多分、病院に行く必要もないと思う。
すぐに悪いエキスは体内から出てしまうよ。
だけど何が起こるか分からないから絶対に一人にならないことだよ。
しばらくそこで横になっているといい。すぐ元に戻るよ。」




孝輔がシャワーを浴びて戻って来ると広志が説明した。


多量の水で体内に蓄積しているヘロインを流し出す、それが広志のインターネットから学んだ知識だった。


発作的に思いもかけない行動をする、とも書いてあったが、孝輔を脅すような事は言わない広志だ。


実際、今回の孝輔は暴れ出しはしなかったが、ひどい脂汗と共にかなり激しい震えも出ていた。


だからいつも誰かが居なければ、孝輔一人では対処出来ないのは明白だった。



そして、広志に勧められるまま一休みした孝輔が起き出してコンピューターに向かった時、広志が誘いの言葉を出して来た。





「ところで孝輔、今から大輔を表敬訪問しないかい。」



孝輔の様子から、少なくとも今日はもう大丈夫、と判断した広志は,
大輔の通う西部高校へ行ってみようと言い出した。



「大輔を… だって、大輔はまだ学校、剣道の練習中だと思うけど… 」


「そうだよ。だから表敬訪問、大輔たちがどんな風に稽古しているか見てみようよ。
あそこは近いから… 」


「だけど… 入った事が見つかれば… 」



孝輔は戸惑いの気持を隠せず広志の顔を見た。


最近はどこの学校でも外部の立ち入りは難しいはずだった。


それに、おとなしい雰囲気のある広志がそんな事を言う事自体、想定外に思えた。


ましてや孝輔は他校の生徒で,休んでいる身ではないか。


戸惑うのは当たり前だ。
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