ツインの絆
「心配ないよ。僕は一応あそこの卒業生だから、
歓迎されることはあっても追い返されることは無いはずだよ。」
広志はそう言いながら孝輔をせきたてた。
そうだった…
広志さんが西部校だから俺もそうする、と大輔は受験したのだ。
孝輔は思い出していた。
二人は康生通りを東へと歩いて、日名にある高校へ向かっている。
最短距離なら、真面目に歩けば15分ほどで着くのだが、二人はゆっくりと話をしながら歩いて行く。
久しぶりに、何も持たずに昔ながらの細い道を、広志と並んで歩いている孝輔は、
それだけで生き返ったような気持がしている。
広志の話す、悟や和也との思い出話は、どれも初耳のものばかりだった。
本当に自分は和也の弟なのだろうか、と思うほど新鮮な思いで聞いていた。
今さらながらに、母の敷いたレールの上しか歩いて来なかった自分が恨めしい。
和ちゃんは広志さんや悟さんと一緒になって、この岡崎の路地を我が物顔で遊びまわっていたのだ。
中三の受験の時だって、母は和ちゃんの事を、勉強をしなくて遊び回っている、
いつまでも赤ちゃんでどうしようもない子と言っていた。
それなのに岡崎で一番レベルの高い高校に、それも悟さんと同じように一番で受かった。
あの時は、担任も母と一緒になって、レベルを落とすように何度も家にまで来ていた。
滑り止めは受けない、と言い張る和ちゃんに、
中学浪人になる和ちゃんを想像して、母は恥ずかしく、
担任は余計な仕事が増えると思っていたのだろう。
しかし父は、やらせてみたら良い、と言った。
父は和ちゃんの実力を分かっていたんだ。