ツインの絆

その内に、自分の部屋でテレビを見ていた父方の曾祖母に当たる朝子が顔を出し、また初めから心配された孝輔だった。


そして父親の孝太が戻り、風呂へ入り仕事の埃を落としてから夕食が始まった。


千草が生きていた頃は、塾や習い事に通う子ども達のためと言って夕食はバラバラだった。


春子がいるから朝子や夫・孝太の夕食に気を配る事もなく送り迎えに出かけていたのだ。


しかし、千草があんな形で死んでしまってからは、いつの間にか昔のように一緒に食事をするようになっている。


職人の仕事はお天道様と一緒、朝が早いから終わるのも早いものなのだ。


ただ、いつも千草から寵愛されていた真理子の姿は見えない。


二年前、あの事故の時は高校二年生、大学まである私学の高校生だったが、信じていた母が、事もあろうに自分が好意を感じていた音楽講師と… それも、自分をピアノのレッスンに送って来て、その帰りに吉村講師と車で… と思うと気が狂いそうだったのだ。


それから真理子の生活態度が変わってしまった。


本来なら大学生になっているはずだが… 何とか高校を卒業まではしたが大学生にはなっていない。


毎日、昼近くまで寝ていて、それから出かけ、夜遅くにならないと戻って来ない。


最近は外泊も増えている。


外でどんな事をしているのか気にはなるが、真理子の受けたショックの大きさが分る家人は、誰もきつく言う事もなく好きにさせている。
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