ツインの絆
「そうか。まあ表向きは橋本商事という看板を上げているが、
数年前に関東の方から流れて来た得体の知れぬ奴が仕切っている。
もっともそいつがどこからヘロインを仕入れているか分らん.
とにかくそこへ行ってみよう。
孝輔がやられたヘロインがそこから来ていた事には間違いない。
それだけで十分だろう。」
「そうですね。まずは孝輔の恨みを晴らす、それが先決です。」
広志もその話には乗っていた。
元々広志が,あきらに持ちかけた話だったのだから当たり前だ。
「よし、飛ばすぞ。」
「駄目だよ、あきら兄ちゃん。あそこにパトカーがいるから安全運転をしないと。
いつも仕事の時は皆に口がすっぱくなるほど安全運転を指導しているのに…
まずいよ。」
確かにあきらは、職人達には安全運転をいつも口にしていた。
皆,見習いの内に免許が取れるから、
仕事に向かう時は大体若い者が運転している。
仕事の途中で事故など問題外だ、と脅すように言っているからか、
幸いな事に今まで一度も事故を起こした事が無い。
もちろん、車の老朽化によるトラブルは時々あるが…
「馬鹿、これは作戦だ。
あいつらにわざと追いかけさせて… まあ、見ておれ。」
そう言ってあきらはスピードを上げた。
場所は豊橋から20キロほど手前。
早速、スピードを出している,あきらたちが乗った車を
パトカーが追いかけて来ている。
が、さすがにあきらは元暴走族。
ハンドル捌きも鮮やかに、複雑な道を縦横無尽に滑走し、
パトカーが自分たちを見失しなわないように、
誘導もしながら豊橋へと向かっている。