ツインの絆
広志の車は一年前に,卒業記念として、
悟、和也、道子、それにあきらからプレゼントしてもらった、
馬力のある4WD車だ。
大半は野崎組のために働くと決めた広志への、道子からのものだった。
最新のナビ機能も付いている。
あきらは一号線を避けてわき道を走っている。
豊橋までの道なら仕事で何度も走っているから、大体は分るがナビがあれば完璧だ。
橋本商事の場所も分る。
「あきら兄ちゃん、捕まったらややこしくなるよ。」
あきらの運転に…
根が真面目な広志は,それまでの感傷的な心は吹っ飛んでいた。
このままでは警察に捕まってしまうという不安で、
生きた気持がしていない。
これは和也や悟に引き込まれた冒険とは訳が違いすぎだ。
テレビの中では言えば、自分たちが悪者だ、とさえ思っている。
そして豊橋の町に入り、橋本商事と書かれた看板が
二百メートルほど先に見えた時あきらは車を急停車させた。
そして車を出て、必死に追いかけてきたパトカーに近付き、
どう言うことなのか、悪びれもせずに真面目な顔をしている。
もちろんパトカーの警察官は、頭から湯気を出しそうな気配を見せ、
あきらを捕まえようとしている。
中に残っている警察官は、気のせいか腰の辺りに手をかけている。
何かあれば拳銃を、と思っている気配だ。
「追いかけてくれて感謝です。」
しかし、あきらは警察官にとても爽やかな、嬉しそうな顔を向けている。
「何を言っているのだ。君はスピード違反をしたのだぞ。」
それでも警察官は,逮捕直前の様相であきらを睨んでいる。