ツインの絆
「これしか方法が無かったから仕方が無かった。
警察はあの橋本商事、ヘロインがらみの暴力団だと分っているのか。
数時間前、野崎孝輔と言う16歳の少年に、
末端の売人がヘロインを押し付けて…
可哀そうに、急性中毒で入院してしまった。
俺たちはその野崎で働いている水島あきらと館山広志と言う者だが… 」
あきらはいきなり口調を変えて、真面目な顔をして警察官に話している。
「野崎ってあの野崎組か。」
岡崎署管轄地から追いかけて来たのだから、当然岡崎署の警官。
岡崎の公共事業にも請負で入る事もある野崎組、
仕事の質の良さは定評がある。
年末好例の城の埃落としにも、消防よりも見栄えがする、と言う市民の要請で、
とび装束の職人がボランティアとして関っているから、
何となく野崎組の名前ぐらいは知っている。
確かにこの男は野崎組の作業服も着ている。
そう思ったのか、警察官の表情から緊張感が消えた。
「ああ、それはともかく被害者は音楽が好きな16歳のおとなしい少年。
それなのに脅してヘロインを、では俺も黙ってはいられない。
豊橋の橋本商事がヘロインを扱っていると言う情報を得たから、
文句を言ってやろうと来たが、
考えてみれば,相手は橋本商事なんて堅気っぽい名前を掲げていても、
中を見れば正真正銘の暴力団。俺たち二人では、
下手をすれば消されて海の底にでも沈められてしまうとも限らない。
そこで目に付いたお宅たちに助けてもらおうと、
わざとスピード違反をしてここまで来てもらったのですよ。」
と、あきらはぬけしゃあしゃあと舌べらを回している。
どんな形にしろ、警察に救いを求めたと言われれば,
無視も出来ないのが警察と言うものだ。