ツインの絆
「まあ、うちのかしらが怒って、別に野崎はヤクザじゃあないが、
息子を可愛がっているから… 分るでしょう。
殴り込みでもかけられたら,それこそ大騒動になる。
何しろうちの連中は、かしら命、の奴ばかりだから押さえが効かない。
だから俺たち二人で何とかしようとして来たのだが…
あ、あいつらの事だから,まごまごしていると証拠のヘロインを処分、
いや額が額だから隠す、だな。
今から俺たちが飛び込むからお宅たちは外で待機していてくれ。
もし誰かが飛び出してきたら捕獲。
あ、そうだ、今頃は俺の家に元県警の刑事部長、高杉剣冶さんがいるから、
事の次第を連絡して支持を仰いでくれ。
あの人なら県警本部にも強いパイプがあるから手早くやってくれるはずだ。」
あきらは、この警察官だけでは当てにならないと考えた。
自分の父の同級生で、元県警のトップクラスにいた高杉を思い出し、
彼らから連絡してもらい、的確な指示を出してもらったほうがベストと考えた。
岡崎警察署の警察官が豊橋に来ても、
スムーズに連絡して行動に出ることは、遅れそうだと思った。
豊橋には豊橋の警察署がある。
同じ県内でも、微妙に手柄争いが生じる可能性があるのが、
縦割り社会の警察機構だ。
「あの高杉部長ですか。
退職されて,今は岡崎の警察道場で剣道指南をしてくれている高杉部長ですか。」
こういうパトロールの警察官でも高杉の事は知っているようだ。
「そうだよ。電話番号はこれだ。じゃあ、頼んだぜ。」
スピード違反者を捕まえたつもりが、思っても見ない方向へ話が行き、
あきらの睨んだとおり,警官達は戸惑っていた。
高杉に連絡するのが最善のように思われた警官は、
急いで言われたとおり水島の家に連絡をいれ…
高杉はあきらの思惑通り,県警、岡崎署、豊橋署、と的確な指示を出した。
野崎組に関することなら,頼まれなくても動くのが高杉だ。
ましてや、ヘロインがらみ、被害者が野崎孝輔なら、
黙っていろ、といわれても、動いていた。