ツインの絆

広志は孝太の言葉を聞き、自分が野崎の家の事でも頼られたと言うことが嬉しく、
心の中から温かいものが生じていた。


今までは自分たちで勝手に野崎の総務部長などと名乗ってやっていたが、
はっきりと野崎の家のことまで頼まれ、
信頼されていると言う気持が膨らみ、嬉しかった。




翌朝、大輔はまだ眠っている孝輔を横目に、
迎えに来てくれた広志の車に乗って家に戻り、
朝食を食べて徒歩で登校した。



「野崎、お前… 」



大輔のギブスを見て剣道部の仲間は驚いている。


顧問の高橋も慌てて駆けつけた。



「野崎、どうしたのだ。その怪我はどうした、
もうすぐ地区大会だと言う事を忘れたのか。」



西部高校剣道部の中心的存在の野崎が怪我をしている。


個人戦はともかく、団体戦で久しぶりに良いところまで行く可能性が大きかったのに、
その夢が儚く消えてしまう。


ここ数年、出れば負け、の剣道部にやっと光が当たったと言うのに。


高橋の顔にはそんな事が書いてある。



「すみません。昨日の帰り道、俺と山田はおかしな奴らに襲われて… 
でも試合には絶対に出ます。
稽古はしばらく休ませてもらいますが、試合は出ます。
山田、お前は打ち身だけだからしっかり稽古しておけよ。」



そう言って、大輔は他人事のように、ひょうきんな言葉を出して自分の教室に入った。




下校後、祖母の心配を笑いで誤魔化し、
大輔はまた孝輔のいる病院へ向かった。


病室には昨日同様に父がいた。


そして孝輔も目覚めていた。


相変わらず顔色は悪いが… 目には生気が感じられる。

    
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