ツインの絆
「孝輔、気分はどうだ。」
「うん… ごめん、僕のために大輔が怪我をしてしまった。
もうすぐ地区大会なのに… 」
やはり孝輔はその事が頭から離れないようだ。
自分のために大輔がとばっちりを受けた。
それは間違いない事実だ。
「こんな怪我どうってこと無いよ。
しばらく練習は休むけど試合には絶対に出る、と先生にも言って来た。
昨日は痛かったけど今日は不思議なぐらい何とも感じない。」
大輔は孝輔が気にする必要は無い、と言わんばかりの元気な様子で
ギブスの上から左手を肩をポンポンと叩いて見せた。
「馬鹿。お前が痛み止めを飲んでいるからだ。
大輔、せっかく来たが…
孝輔を家に連れて帰ろうと思っていたところだ。」
父が言葉とは裏腹に、安堵した顔をして大輔に声をかけた。
「えっ、もう退院できるの。」
「ああ、先生が許可してくれた。
孝輔も帰りたいと言うし、俺も孝輔が家にいるのなら安心して仕事が出来る。
今広志に連絡したから、その内に迎えに来るだろう。」
父はその時になって、初めて二人にあきらと広志の働きをかいつまんで話した。
「本当。」
大輔が興奮したような声を出した。
広志さんは確かにあきらさんと、ヘロインを扱っている背後を探すと言っていた。
しかし、いつの間にそんな事をしたのだろう。
いや、考えられるのは昨夜しかないが…
しかし昨夜は孝輔が…
大輔はそんな事を思いながら孝輔を見た。
すると孝輔も大輔を見ていたから目が合ってしまった。
心なし不安そうな顔だ。