ツインの絆

それでもみんな、孝輔がバイオリンを弾いているのを応援してくれている。


しかし,最近特にそうだが、周囲に目を向けてみると… 全く自信が無い。


昨日も午後に組まれている実技の時間に、友人との差を感じたところだった。


皆、目の前にぶら下がっている美味しい餌に向かって全力で邁進していると言うのに、自分だけ他の世界に居るみたいな… こういうのをプレッシャーと言うのだろうか。


自分に比べて大輔のあの自信が羨ましい。


バイオリンは好きだが… プロになって世に認められなければ、それだけで食べていくのは難しいらしい。


先輩達の大半は卒業して音楽関係の仕事をしているが生活は楽ではないらしい。


だからいつの間にか諦めて普通に就職の道を選んでいると言う。


僕はどうなるのだろう。


今からこんな事を思う自分は既に負けている。


この腕では練習は当分出来ない。


腕のせいにしてコンクールに出るのを止めようか。


初めての大勝負だが… 


孝輔はバイオリンケースを見ながら,自分の悶々とした不安な気持ちと葛藤している。


昨年は入学出来た事に感激して、新しい環境に慣れることに必死だった。
お陰で母の醜聞もほとんど思い出さなくなったが。
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