ツインの絆
大輔は、同じ双子と言っても母からの愛情は薄かった。
千草は上品で大人しくて可愛い子供が好きだった。
真理子はまさにそのコピー、そして孝輔も大人しくて母の希望通りの子供だった。
それに比べて、双子でも大輔は,和也とは異なっていたが、活発で大人しくはなかった。
一緒に出かけても,動き回るから手が掛かったのだ。
そして究めつけは、大輔が剣道を始めた時点で,完全に千草の大輔への興味が消えた。
もっとも,家には元気な祖母がいたから、大輔が寂しく感じることは少なかったが。
親との別れに大きさなど無いが、実際に母の死にショックを受けたのは真理子と孝輔だった。
しかし孝輔は母が希望していた高校を受験して、こうして通っている。
自分でも遠いと思ったが、毎日岡崎を出ると言うことは母の醜聞から離れられる事と思った。
確かに時間に追われる生活が始まり、母の事を思い出すゆとりは無かった。
充実していると思っていた。
二年生になって… クラスメートが初めてライバルに見えてきた。
そして今は、初めて感じた不安の中にどっぷりと浸かっている孝輔だ。
大輔のあの自信… 本当に強いのだろうが… 羨ましい。