ツインの絆
「親父、中学の友達だった野崎だよ。」
実は店にいた父親に孝輔を紹介した。
「野崎… ああ、あの野崎組の… 確か双子ちゃんだったなあ。」
実の父親は顔をほころばせて孝輔に微笑んだ。
早川親子は中学を卒業するまでは、中学校の近くのアパートに住んでいた。
その後、このラーメン店を借りて、二階で暮らしながら商売をしているようだ。
「野崎、ラーメン食べるか。俺が作るラーメンもなかなかいけるぞ。なあ、親父。」
「バカヤロウ。俺が下準備をするから出来るだけで、偉そうな顔をするのは十年早い。まあ、そういうわけだからこいつのラーメンを食ってやってください。実、俺はちょっと上ヘ行って母さんの様子を見てくるから店番頼むな。」
そう言い残して早川の父親は二階へ上がって行った。
「野崎、どうかしたのか。お前自殺でもしそうな様子だったぞ。」
昼下がりのラーメン屋、近くに大きなショッピングセンターがあり、レストラン街も出来ているから、車で買い物に来た人がわざわざここまで来て食べないのだろう。
話をするにはちょうどいいが、客は誰もいない。
「客がいないなあ… 」
孝輔は早川の言葉には応えず、閑古鳥が鳴いている店内の様子を話している。
別に心配している訳ではないが、自分の抱いていたラーメン屋とは雰囲気が違うような気持になり、何となく出した言葉だった。