ツインの絆
「野崎、今度はお前の番だ。何があったのか話せよ。何を聞いても絶対に誰にも話さないから安心して話してくれ。その腕、どうした。その顔も… まさか喧嘩などしないよな。お前が喧嘩だなんて聞けば天と地がひっくり返る。誰かに脅されているのか。」
早川は自分の想像出来る事を口に出している。
小学校、中学とレッスンに遅れそうになると母親が車で迎えに来ていた過保護な同級生,野崎孝輔。
他にもそういう子がいたのだが、孝輔がバイオリン、と言うことで目立っていたのだ。
勿論その事が原因で、時々は同級生からからかわれたり,いじめを受けたりもしていたが、その時は不思議な事に,いつも大輔が現われて、俺の弟に文句があるのか、と脅していた。
だから、たいそうな事にはならなかった。
とにかく,今の孝輔の顔は誰が見ても殴られた痕だ。
高校生になって170㎝以上になっている孝輔、切れ目が涼しげなその顔立ちも人目を引くかも知れないし、バイオリンを持っていればなおさらだ、と早川は考えているようだ。
確か名古屋の高校へ行ったはずだが… 誰かに目をつけられてやられたから今日は学校を休んでいるのか。多分そんな所だろう。
真剣な顔をして自分を見ている早川に、孝輔は弱々しく微笑んだ。
「早川は相変わらずお節介だなあ。」
「だって仕方がないだろ。今の俺は毎日親父相手に暮らしているのだぞ。別に嫌とは言わないが… やっぱり友達って、欲しいよな。皆は高校生活を楽しんでいると言うのに、っと、思えばちょっとな、分るだろう。」