ツインの絆
しかしこの顔では、気にするな、と言っても…
「ああ… うちにはそんな老人はいないけど、何となくわかるさ。お前のことが心配なのだ。」
「うん。あ、これはちょっと… いつものように大輔が来てくれたから助かった。僕は喧嘩をしたことが無いから弱い。」
孝輔はそれでも自分を見つめている早川に,根負けしたように付け足した。
そして、一つ所にじっとしていない和也と、剣道一直線の大輔を思い、自分の弱さを改めて思い出していた。
何もまともに出来ない情け無い奴… それが野崎孝輔だ。
「そんな落ち込んだ顔をするなよ。今どき喧嘩慣れしている奴の方が少ないさ。それにお前にはあっちの野崎がいるから心配する事は無いさ。」
まだ早川は孝輔が恐喝者に怯えている、と思っているのか、お前には大輔という強い兄貴がいるのだから大丈夫だ、と言って励ましている。
その真剣な顔に… 孝輔は思わず苦笑した。
それからも二人は早川の作ったラーメンを食べながら二時間ほど、中学時代の思い出話と言うほどのものはなかったが、とにかく四方山話をしていた。
そして夕方になったからか、一人の中年男の客が来て、それから三人のパート帰りのような女性たちが餃子を買いに来て、早川の父親も店に出て来た。
「早川、今日はありがとう。 楽しかった。」
「ああ、俺もだ。野崎、また来いよ。ラーメンならいつでも食わせてやるからな。 約束だぞ。」