ツインの絆

孝輔は早川とどうでも良い事をたらたらと話したせいか、重く沈み加減だった気持が軽くなっているのに気付いた。


考えてみれば、今までこんなに長く話し込んだことは無かった。


小学校の頃は,大輔と二人でレッスンの無い日は長い事遊んでいた。


今では同じ家に住む双子と言っても、お互いに進む道が異なり、毎日顔を合わせて話はしても、お互いの報告程度で終わっていた。


孝輔の口から出た、楽しかった、は無意識の内に出た本心だった。



そんな温かくなった心を抱きながら、孝輔は目に付いたバス停で立っている。


来る時はただやみ雲に歩いて、気がついたらここまで来ていたが… 歩いて帰るには時間がかかり過ぎる。


孝輔がバスを待っていると、一台の真っ赤なスポーツカーが止まり、短い髪をきれいな金髪に染めた若い女が顔を出した。



「あんた、岡崎竜城中にいた子でしょう。顔、覚えているわ。乗りなさいよ。乗せて行ってあげる。」



いきなり女から声を掛けられ,孝輔はうろたえた。


こんなスポーツカーに乗っている人に声を掛けられるなんて… 
こんな事は16年の人生で初めての事。


まるで映画のようだと思った。



「結構です。もうすぐバスが来ますから… 」



孝輔は胸がドキドキしているのを感じながら、隣で立っている人にどう思われるかを気にして慌てて返事をした。


多分、顔も赤くなっているだろう。



「バカなこと言わないで、さっさと乗りなさいよ。ほら、バスが来たわ、邪魔になるから早く乗って。」



 ヒステリーのような声にせかされて… バスが来たならそれに乗れば良かったが、結局孝輔は、反射的に,言われるまま女の車に慌てて乗ってしまった。
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