ツインの絆

「中学二年の夏まで親は本町で時計屋をしていたのだけど,親父さんが病気で死に、借金があったという噂もあった.
三年の時、お袋さんが福岡町の方で不動産屋をしている男と再婚したらしく、向こうに引っ越した。
だけど弟や妹はおとなしかったが、あいつは中学に入った頃から反抗的で、今では手の付けようが無い程危ない奴だよ。
俺の妹があいつの妹と同じクラスで、引っ越した後も電話をしたりしているから様子が分る。家族も困っているらしい。
妹や弟はあいつのことで仲間はずれにされるらしい。」




山田まで知っていたらしく、木村の言葉を補うように大輔に説明している。




「そんな女と孝輔が… 何かの間違いではないのか。あいつはおとなしくて女と話をすることも無かった。
ああ、確かに最近のあいつは何か隠しているようなところがあった。だから気になっていたのだが何も話さないから… 」




大輔も正直に自分の今の心境を友人に話した。




「野崎、怒るなよ。あのな、まだ続きがあるのだ。その時河村の車は… その二人が乗った車、あのな、西尾の近くにあるラブホテルに入って行った。本当のことだ。
ちょうど祖父の車がエンストを起こして,修理屋を待っている時に見た。
派手な真っ赤な車だった。そこにお前の弟を見て俺、自分の目を疑ったが、確かに河村の横にいたのは、お前そっくりのあの弟だった。」




大輔はその言葉に、一瞬にして心がビシッ、ビシッと音を立てて氷結していくのが分った。


あの孝輔が… そんな事は信じられない。


自分達は二年前の母の死以来、特に心を通わせて来た。


自分のところに来た友人達が、異性のことに興味を持って騒いでいても、同じ場にいた孝輔は全く無関心だった。


あの孝輔が異性とラブホテルへなど… そんな事があるはずが無い。


それも相手は不良として名高い女、年上の女と付き合うなんて有り得ない事だ。
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