ツインの絆
「ちょっと疲れているから、明日の予習を済ませたら早寝をしようと思っているけど.]
案の定、今日も孝輔の返事は大輔を避けている。
しかし、家族の前ではっきり嫌だとは言えないらしい。
「大輔、今日でないと駄目なのかい。孝輔はしばらく休んでいたから疲れが激しいのだよ。眠たい時はゆっくりと眠る事、ねえ、おばあちゃん。」
春子が85歳の朝子に同意を求めた。
この二人は孝太の祖母と妻の母と言う関係だが仲が良い。
「そうだよ、大輔。孝輔は名古屋まで通っているから疲れるのだよ。話ならいつでも出来るよ。」
二人は、同じ双子でもひ弱に見える孝輔を暗黙の了解の下に庇っている。
元々二人は長男の和也を目の中に入れても痛くないほど可愛がっていた.
その和也が中学を卒業すると家を出てしまい、その後は千草に構われない大輔を可愛がって来た。
しかし、今はその千草も亡く、好きな剣道ではつらつと輝いている大輔も可愛いが、おとなしい孝輔に興味が偏って行った。
孫が成長し、面倒を見る対象が無くなってしまえば,それが自然の成り行きだろう。
「しかし、少しぐらいならいいじゃあないか。親が口出しするような事ではないが、最近のお前達はちょっとおかしかったぞ。
この辺りでゆっくり話しでもしたらまた調子が戻って来るはずだ。な、孝輔。」
珍しく孝太がその場を納めるように孝輔を促した。
孝太も父親として、最近の二人の様子に違和感を抱いていたようだ。