ツインの絆

しかし、元来我儘な真理子は我慢する事をおぼえず、最近ではよく口論から派手な喧嘩まで起こすようになっている。


琢磨にしてみれば、うるさく付きまとわれるより… どうせこんなお嬢さんはそのうちには飽きるだろう、と思っていたが、ますます妻のように口うるさくなってきた。


そして、最後には琢磨の口から,出て行け、という言葉になるのだが、呆れた事に真理子は琢磨を脅す事も覚えていた。




「18歳の私を散々もてあそんで,追い出そうなんて虫が良すぎる。出るところに出たら世間が何と言うか。
岐阜へ行っても良いのよ。田舎の暮らしも悪くないかもね。」



などと、平然として琢磨の実家のことまで出す始末だ。


要するに、真理子はこの2DKのアパート暮らしが気に入った。


琢磨と並んで歩けば、美男美女のカップルとしてすれ違う人が振り返る。
それが嬉しくてたまらなかった。


真理子は野崎の家のことは話さなかったが、琢磨の所へは岐阜から思い出したように電話がかかり、果物が送られて来た事があった。


実家は農家で姉が結婚して同居、弟が一人いる事も分っていた。


すぐに岐阜へ行き、琢磨がホストをしている事を皆にばらすと言っていた。


今年こそは進級して、四年になったらホストもやめて就職活動を… と思っている琢磨にしては迷惑な話だが、実際18歳の女と同棲のように暮らしているのだから反論は出来なかった。


もちろん【愛】などは微塵も感じていない。

ただ成り行きで抱いてしまった。

それがずるずるとこんな形で来ているだけだが… 





「ねえ、また高級なレストランへ連れて行ってよ。あれからもう一週間経ったわ。今度はイタリアンでいいわ。」




つい数分前に出て行け、と言われたのに,真理子は何も感じないのか、琢磨に自分の希望を言っている。



「ああ、考えておくよ。」



琢磨も面倒なことは避けようと思ってか、何も無かったような言葉を出している。
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