ツインの絆
「いや、明日行きたいわ。明日行きましょうよ。」
「明日は駄目だ。レポートの提出が迫っているから明日は図書館だ。」
「何よ。図書館など行かずにここですればいいじゃあない。」
「お前がいては出来るものでも出来なくなる。放っておいてくれ。
今年は進級しなくてはならないのだから邪魔をするな。
大体お前いつまでここにいるのだ。家の人、心配しているのではないか。」
「関係ないわ。私は琢磨が好きだから一緒にいたいの。私を追い出そうとすれば大騒ぎをしてやるから。」
真理子はそんなふてくされた事を言いながら、琢磨が学校帰りに買ってきた弁当を食べている。
琢磨は七時からホストの仕事に出かけるから大抵の夕食はこんな感じだ。
琢磨が出かけると真理子は携帯を取り出してどこかへ掛けている。
が、しばらくして携帯をバッグに収めた。
どうやら相手の応答がなかったようだ。
実はこの真理子、本当は他の男を愛していた。
名前は貴島洋介、25歳の修理工で20歳までは豊橋を中心に暴れていた暴走族のメンバーだった。
それで警察のお世話になり… 岡崎の岩津と言う所にある小さな修理工場で働くようになった男だ。
親は平凡なサラリーマン、豊川に住んでいるが、高校を中退してからは一度も帰っていない。
仕事が終わればすることの無い洋介は、愛用のバイクに乗り、毎晩のように戸崎のショッピングセンター辺りに来ていた。
その辺りは、昼間こそ買い物客で溢れているが、夜になればどこからとも無く若者が集りたむろする場所にもなっていた。
しかし、警察署の近くということもあり、不思議と暴力沙汰は起きていない。