ツインの絆
もちろん、その言葉に琢磨は内心ほっとしたものの、一応は驚いた振りをした。
「急にどうしたのだ。お前、ここが気に入った、と言っていたじゃあないか。」
「別に… そろそろ親がうるさいかなあと思って。琢磨に迷惑がかかってもいけないから帰ろうかなあと思って言ってみたけど、ここにいて欲しい。」
真理子がそう言うと琢磨は慌てて言葉を出した。
「いや、俺もこれからは忙しくなるからお前の事まで気にしてやれないかも知れないから… すんなり家に帰れるのか。」
琢磨はその容姿からホストにピッタリのイケ面として人気もあるのだが、心根は優しい男のようだ。
真理子が出て行ってくれるのは嬉しいが、二ヶ月近くもここにいたから、真っ直ぐ家に戻れるかが心配になっている。
「それは大丈夫。私のことなど誰も気にしないから。」
そう言って、真理子は琢磨に買ってもらった衣服を大きな紙袋に入れ、東岡崎駅まで送ってもらい、あっさりと別れた。
普通なら二ヶ月近くも一緒にいて、居座っていた女に服等を買ってやり、食事の世話までしていたのだから、未練と言わなくても,何か礼でもしてもらわねば、と思うのが男だろう。
真理子に関して言えば、琢磨が言えば掃除機を使う事もしたが、ろくに家事をしないのに平気で小遣いをせびり、琢磨と釣り合いの取れる服が欲しいとか、高級な店で食事をしたいなどと言っていた真理子。
一緒に出かければ悪い気はしなかったが、何にしても金がかかった。
ホストの収入が,かなりあったからそれもできた事だが…
だから本当に出て行く、とわかった時は小躍りして喜んだ琢磨だった。