ツインの絆
それから数日後、真理子は家に戻ったものの家人とはまともに話をしないまま、と言うよりは,祖母たちが話しかけても無視するようにして,昼頃になると出かけていた。
以前のような生活だ。
真理子の部屋は、以前体の不自由な孝太の母優子が使っていたところで、ピアノを置いても十分の広さがあり、コンパクトなバス・トイレやキッチンも付いている。
台所から食べ物を運び込めば、家人に干渉されずに生活出きるのだった。
もちろん母が存命中はそんな事はしなかったが…
岡崎に戻ってからの真理子は、高校時代に知り合った遊び友達、鍋島京子の働いている福岡町の喫茶店に入り浸っていた。
そして京子の仕事時間が終わると、二人でブラブラと若者がたむろしているところへ行っていた。
「真理子、ニュース見た。あの白骨死体… 」
「ううん、知らない。何、白骨死体がどうしたの。」
真理子は母の死以来、マスコミと言うか,ニュースの類に関心が持てなくなっていた。
たとえ流れて来ても、耳を素通りしていたのだ。
そして京子は… そんな真理子の全てを知っている、いや、知っていた上でのただ一人の友達だった。
琢磨の事も知っていたが、ただあきれて見ていただけだった。
「うん… まだ洋介、見つからないのでしょ。」
「きっと、私にやきもちを焼かせようとして、どこかの女のところに転がり込んでいるのよ。」
真理子は精一杯、自分には余裕の心がある、と言うように苦笑して京子を見た。
が、何故か京子の顔は緊張しているように蒼ざめ、話し辛そうな眼差しで真理子を見つめている。