ツインの絆

「いい加減にしろ。あいつは疫病神だったのだ。
あいつのお陰で俺たちがどれだけ肩身の狭い思いをして来たか、忘れたのか。
こいつだって嫁ぎ先でどんな思いをしていたか。これでいいのだ。
俺たちには息子などいなかったと思えばいい。
あんなところで三ヶ月も… 白骨になって発見されたのも自業自得だ。」


「でも… あの子は、あの時あんなにはつらつとした顔をして家に来たというのに… 
あなたがもう少し温かく迎えてやっていれば… 」


「俺のせいだと言うのか。暴走族になど入って散々悪さをして,挙句の果てには刑務所。あの時の俺たちの気持を考えもせずに、よくぬけぬけと顔を出せたものだ。
お前だってあの時は、外には出られない、と言って泣いていたではないか。
それなのにあんなに嬉しそうな顔などして… 俺は絶対に許せない。だから出て行け、と言ったまでだ。
大体暴走族に入ったのだってお前が甘やかして育てたからではないのか。
家の墓に入れるのだって考えものだと思っているが、まあ、警察がらみで戻って来たから放っても置けず、こうして経まであげてもらっている。
あいつの事はこれでもう仕舞いにしよう。」


「でも… 私はあの子の話が何だったのか知りたかったですよ。
何も言わない先に追い出すなんて… 可哀そうでした。」





真理子は物陰から両親の会話を聞き… ことの次第が見えて来た。


あの時洋介は、自分との事も含めて両親に話し、真面目に暮らしている事を報告したかったのだ。


だけど父親に罵倒されて… 頭にきた洋介はやみ雲にバイクを走らせ,鳳来山まで行ってしまった。


それで運転を誤って転倒し崖下に墜落した。


それなら話は通じる。


洋介は過去の自分と決別しようと必死だったのに両親、特に父親は許さなかったのだ。

ここに来て洋介の事情は理解出来た。


金輪際この親の前に現れる事は無い。


こいつらが洋介を殺したようなものだ。


真理子は洋介の家族を遠目に睨み、自分に誓った。
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