ツインの絆

それに、誰にも言えた事ではないが、この滝口は十年ほど前には、
デートスポットとなっている岡崎公園から菅生川原に掛けて、

逢瀬を楽しんでいるアベックを襲っては,

女をレイプ、男は痛めつけてから金銭を奪う悪事を重ねていた。


もちろん警察も警戒はしていただろうが… 


その時にあきらと出くわし、

野崎の庭先でふざけた真似をするな、

と、まるでどっちがヤクザか分らないような口調と迫力で威嚇され、
四人も仲間がいたというのに、動けないほど痛めつけられた過去もある。



その時初めて、水島あきらがとび職野崎組にいると分かり、

それ以後は菅生川から康生よりには足を踏み入れていないのが滝口だった。



あきらの闘い方はめちゃくちゃ流、鋭い瞬発力があり、
暴れ出すと徹底的にやっつけるまで動きを止めない。


とにかく相手にならない方が勝ちだ、と戒めている悪がこの界隈にはかなりいる。


そんなあきらのいる野崎組の息子にアキが手を出してしまった。


とにかく自分は知らなかった事にしよう。
と滝口は弟分の高井に後は任せた、と言うような言葉を残して店を出て行った。




「何かよく分らないが… アキ、どうする。」


「滝口さんもだらしない。たかがとび職人じゃあない。
私は真理子に貸しがあるから… いつものように薬をもっとちょうだい。
私を抱かせてやったのだから、その分は取り返さないと、ね。」



そう言いながら、アキは自分の足元で正体無く眠っている孝輔の髪を掴み、顔を上げさせ、憎しみの籠った眼差しで睨んだ。



「このままもっと飲ませちゃおうか。」


「馬鹿。初めは少量だ。急性中毒になるとヤバイから気をつけろよ。
それにしても… よくこんな餓鬼を相手にしたなあ。」


「面白かったさ。初めは震えていたくせに、今ではいっぱしの男気分。
今の自分がどうなっているのか知れば… 見ものだね。」



アキは傍にあったビールを高井にも渡しうまそうに飲み始めた。

その姿にはどこを見ても17・8の少女の面影は無い。


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