ツインの絆
「真理子、一体どうして… 則ちゃん、救急車。」
翌日、あまりにも動く気配の無い真理子の部屋をのぞいた春子は、シャワーを出しっぱなしにして手首を切っている真理子を見つけ… 気は動転しつつも、
必死の面持ちで救急車に乗り込んだ。
春子の指示で則子は孝太に知らせ… 夕方帰宅した大輔も慌てて病院へ掛け付けた。
孝輔は… まだ戻って来なかったが、学校が遠いから,今頃は帰宅途中の電車の中だろう、とメールで連絡しておいた。
「大輔、孝輔はまだなのか。」
和也がいない今、自分が株式会社野崎組と野崎の家族を守る、と決めている館山広志がかしらの孝太を送って来て、そのまま全て仕切るように、病院での家族が落ち着けるように気を配っている。
そして今は、一人だけ姿の無い孝輔の事が気になるようだ。
家に戻っているようなら迎えに行こう、と思っているのだろう。
その真理子、一命はとりとめたが、助けられた事に興奮して精神異常者のように暴れだし、睡眠薬を投入して眠らせたところだ。
突然起こった娘の自殺未遂、わけの分からない孝太は、言葉を失ったように真理子を見つめるだけだ。
春子も孫の心を理解出来ず、ただ動揺し泣いている。
そんな空気の中、大輔は不思議な気持で血の気が無く眠っている真理子を見ていた。
あれだけ気ままな暮らしをしていたのに何故だ。
男に振られたぐらいで落ち込む姉ではない。
勝手な事を言って、相手を平気で傷つけ何も感じないのが真理子だ。
孝輔の事は気にしないでおこう、と決めて剣道に打ち込み始めた矢先に、今度は姉の自殺未遂。
何が原因かは分からないが… 大輔はベッドの横で固まっている父が哀れだった。