ツインの絆
「父さん… 」



 大輔が声を掛けても、孝太は聞こえないのか微動すらしない。



「大輔、真理ちゃんに何があったか、心当たりないかい。」



その様子を見た広志が大輔に話しかけた。



「無い。俺、真理ちゃんとはまともに話をしていないから。俺が家にいる時は真理ちゃんほとんどいなかった。
広志さんも気付いていたと思うけど、真理ちゃんは母さんが死んでから世の中をすねたところがあったから。」



「そうだったね。孝輔には大輔がいたから良かったけど、真理ちゃんはちょっと感じが違っていたからね。分った。真理ちゃんのことは僕が調べてみる。」



「広志さんが。」



どうして広志さんが、と言うような顔をして大輔が広志を見ると、広志は優しい眼差しで大輔を見て笑みを浮かべた。




「僕は和ちゃんの代わりだよ。和ちゃんや道子おばさんに言われている。野崎のことは会社も家も僕が守らなければならない。僕の仕事だよ。

大輔も知っているだろうけど、僕は10歳の時に父さんに連れられて岡崎に来た。館山の父さんは孤児だった僕を養子にしてくれた人だから生涯を掛けて親孝行する。

でも、僕を本当にこういう自信が持てる人間に引き上げてくれたのは、道子おばさんと和ちゃんと悟兄ちゃん。それにあきら兄ちゃんのあのパワー。
今、悟兄ちゃんは弁護士、和ちゃんはビジネスの実践を体験しながらアメリカの大学院、道子おばさんは野崎の会長だけど七十を超えているから、健康に気をつけて好きな所で気楽に暮らして欲しい。
だからとび職野崎組はあきら兄ちゃんが、僕は裏方として、野崎全体を支える役。

おじさんが野崎のかしらとして頑張るためには、家庭内のトラブルはなるべく軽くしたいと思っている。
そうでなくても二年前にはいろいろあったから… 
和ちゃんもおじさんのことは気にしている。和ちゃんのことだから、その内にまた舞い戻って来るだろうけど… 
とにかく真理ちゃんに何があったのか調べてみる。

大輔はおじさんのこと、頼むよ。あ、それからおばあちゃんたちのこともね。
水木のおばあちゃんは昼からずっと泣きっぱなしだ。」






    


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