ツインの絆
「腹は空いてないか。」
「要らない。」
「そうか。」
大輔は急いで水を持って孝輔の部屋へと行った。
孝輔はうまそうに水を飲むと、そのままベッドに倒れ込んだ。
「孝輔、駄目だ。服を脱がなければ… 」
そう言いながら大輔は孝輔の制服を脱がして… 息が止まるほど驚いた。
孝輔の体には無数のあざが… 実際はアキが噛み付いた痕だったのだが、大輔には初めあざと見えた。
赤紫色に変色した肌の周りの所々に、口紅までもが染み付いたように残っている。
孝輔が河村アキと付き合っている事を知っている大輔は、アキの仕業と言う事は容易に理解出来た。
あの後、いつまでも朦朧としている孝輔に業を煮やしたアキが、噛み付いて刺激を与え,意識を戻らせようとしたのだ。
その痛みで何となく意識を戻して、やっと今になって戻れるようになった孝輔だった。
大輔は孝輔の体を家人に見られないように、ぐったりして眠っている孝輔にパジャマを着せた。
そして、そのまま孝輔の顔を見入っている。
どうしてこうなってしまったのだ。
そう言えば… 孝輔が腕を痛めてから様子が少しずつおかしくなっていた。
あの頃に河村アキに会ったのか。
しかし、そんな不良がどうしておとなしい孝輔に目をつけたのだ。
あれ以来、孝輔はバイオリンを弾いていない。
バイオリンは… ケースは持って行っても、中身はいつもこの部屋に残っている。
そしてケースの中は私服がねじ込まれている。
学校帰りに服を着替えてアキに会っていたのか。
大輔はこんな様子の孝輔を見てどうしたら良いのか分からなくなっていた。