ツインの絆
これは自分が知っている孝輔の姿ではない。
しかし,自分の気持ちを言えば、余計なお節介のように思われる。
自分なら絶対にアキなどとは付き合わないが、孝輔はアキのことがそんなに好きなのか。
わからない… 大輔はそんな事を考えながら孝輔の顔を見入っていた。
「大輔、ここか。」
大輔が孝輔の顔を見ながらいろいろ考えていると、父の声がしている。
振り返れば廊下に父が立っているではないか。
「父さん、帰って来たの。」
「ああ、お母さんが病院に詰めると言ってきかないから、まあ、完全看護だが眠れるように布団を頼んで戻って来た。
孝輔はどうしたのだ。」
父は大輔が見守るように座り込んでいるからか、孝輔の寝顔を見て尋ねている。
大輔は孝輔の事を父に知られまいとして、慌てて言葉を考えた。
「別に… 余程疲れたらしく戻ったらすぐにバタン・キューで寝ちゃったから、おかしな奴だなあと思って顔を見ていた。
双子でもやはりかなり違うものだね。それより真理ちゃんは。」
大輔は立ち上がって父と一緒に階段を下りながら、
一時忘れていた真理子のことに話を移した。
「なあ、大輔、お前何か知らないか。真理子が何故あんな事をしたのかは分った。あいつ妊娠していた。18歳で妊娠とは…
俺がもっと厳しくしていなければいけなかった。
まあ、それはそうだが… お前、真理子が誰と付き合っていたか知らないか。」
そう話す父の顔には、自分を責めているような苦しみが浮かんでいる。
48歳、いつもは実年齢より若かった父が、一度に歳を取ったように感じられる。
大輔はそんな父を見て、胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。