ツインの絆
「俺も真理ちゃんのことは何にも知らない。昔から真理ちゃんは俺などいつも無視していたから…
でも、広志さんが調べてくれるって言っていたよ。あの人は頼りがいがある.
その内に何か教えてくれるよ。」
病院で広志が言っていたことを思い出した。
「そうか… 広志が調べてくれるのか。ああ、あいつはしっかりしているからなあ。
俺も真理子のことは母さんに任せっきりだった。
もう母さんはいないのだから、俺が母さんの分もしっかり見てやらなければならなかったのだが… 情け無い父親だな。
幸い未遂に終わったが、もしあのまま戻らなければ… と思えば寒気がして震えて来る。お前がしっかりしていてくれて良かった。」
疲れたような顔はしているが、孝太はやはり存在感がある父、大輔を優しい目で見ながら自分の気持ちを伝えている。
俺だけでも父に心配を掛けないようにしなくては。
そうか、孝輔の事も… 知られてはならない。
何とかしなくては…
ここに来て大輔は一人で大きな荷物を背負ったような気持ちになっていた。
しかし、それこそ、そんな気持は父に知られてはいけない。
「そんな事は無いよ。父さんは大変なのによくやっていると思うよ。俺、父さんのこと、自慢だ。真理ちゃんのことは様子が分ってから考えようよ。
父さん、久しぶりに一緒に風呂に入ろう。俺、背中を洗ってやるよ。」
「そうだな。分らない者同士があれこれ考えても進展は無い。
広志は和也や悟と一心同体のような奴だ。ああ、頼りになる。
よし、風呂へ入るか。」