ツインの絆
真理子は一週間入院して戻って来た。
真理子の自殺未遂以来、春子は真理子の傍から離れようとせず… しかし皆真理子の妊娠話を避けるように過ごしていた。
真理子も何を思っているのか、その事には触れようとしなかった。
「ふざけるな。別れるだと。散々良い目を見せてやったのに勝手に別れられると思っているのか。
お前はもうすぐヘロインの虜になる運命だ。何度か飲み物に入れて飲ませてやった。
あのキャンデーにヘロインが含まれていたのさ。
お前はもう私からは離れられない。」
家の中は真理子の事で神経をすり減らしている。
自分まで皆を悲しませては… 孝輔はやっとの事にそこまで辿り着いた。
アキには未練が有るが、このままではいけないと言う結論だ。
そして、翌日の夕方、最近はデート場所と決めている駅裏のスナックへ行き、自分の気持ちをアキに伝えた。
するとアキの口から出たのは、男か女か分らないような凄みのあるこの口調だ。
顔は下品にゆがみ目つきも怪しくにごっている。
その豹変さにも驚いた孝輔だったが…
アキの口から出たその言葉を聞いた孝輔、初めは意味がよく分からなかった。
しかし何となく思い当たる事もあり… 自分の耳を疑いたかった。
「ヘロイン… 僕がヘロイン… じゃあ、最近の疲れやすさはそのせいなのか。
どうしてそんな事を… ひどい、ひどいじゃあないか。」
一瞬にして目の前が真っ暗になった孝輔だ。
家族は真理子のことで皆心痛している。
そんな時に自分まで心配をかけてはならない、と考え抜いた末に、孝輔はアキに別れる事を言い出したのだ。
そして怒ったアキが投げかけたのが、その言葉だった。