ツインの絆
ヘロイン… いくら知識がなくても、ヘロインがどんな作用をもたらすかは孝輔でも知っていた。
しかし、まさか自分がそんなものを口にしていたなんて… 知らなかった。
その時の孝輔、厚化粧をしてけばい服装のアキが、鬼や悪魔に見えている。
しかし、どうしてこの女は僕にそんな事を…
あの時声を掛けてきたのも彼女からだった。
「ふん、あきらめな。警察になど行けやあしない。警察になど行けばお前が捕まる。
尿検査をすれば違法ドラッグのヘロインが検出され… 警察も家族も大騒ぎだ。
学校も退学だ。何と言ってもヘロインだからね。
正確にはヘロインに頭痛薬のタイレノールを混ぜたものだが,検査をすれば,ヘロインも出る。
私は大丈夫。私は一度も口にしていないから何も検出されない。」
アキは孝輔の前で腕を組み、勝ち誇ったような顔をして薄ら笑いをしている。
「アキさんはどうしてそんな事を僕に。僕に恨みでもあったのですか。」
孝輔は混沌とした頭を必死で立ち直らせ、ショックで体を震わせ、
涙を浮かべながらアキに理由を聞いている。
自分がヘロイン… 確かに最近の自分は…
遅いかも知れないが納得のいく話を聞きたかった。
「お前ではなく真理子さ。お前は真理子といつも一緒だっただろう。
あいつはピアノ、お前はバイオリン、いつもお袋さんの車で,澄ました顔をして平気で早引けして行った。
ふん、もっともそのお袋さんはピアノ講師と不倫して挙句におっちんじゃったらしいね。自業自得だ。それも鼻に付いたが…
許せなかったのは、真理子が私の男を寝取ったことさ。
あいつ、澄ました顔をして他人の男を手なずけた。許せないだろ。
だからあいつの弟を仕返しの道具にした。
帰ったら真理子に恨みを言ってやりな。薬は欲しくなったらいつでも売ってやるから連絡しな。」
アキはそんな事を言ってビールを飲んでいる。