ツインの絆

真理子… 姉はこんな奴らと付き合っていたのか。


アキの男を取った… あの姉ならするかも知れない。


孝輔はまだ母の存命中、中学に入った頃の事を思い出した。


真理子が中三で、あの頃は大学の非常勤講師をしていた吉村が、真理子を指導してくれると言う事で、母が張り切って送り迎えをしてくれた。


孝輔は、その時あまり良い気分ではなかったが、バイオリンが楽しくて仕方が無い時期だったから母に何も言わなかった。


中学の授業よりレッスンを重視していた母は、まだ下校時間にならない時でも、平然と先生に理由を告げて真理子と孝輔を連れ出していた。


あの光景は全校生徒が目にしていたのだろう。


当時、中二だったアキまでが口にするのだから… 


母はその吉村と不倫して死んだ。


残った家族を苦しめる醜聞だけを残して… だけど、それだけではなかったのだ。


姉が今のようになったのも母のせいだ。


このアキが姉を憎んでいるのも… いや、姉は元々そう言うところがあった。


自分なら許される、と思う、思い上がったところがあった。


だから時々兄の和也と言い争いになり… 大抵は母が姉の味方をしていたが、

たまたま隣の家に来ていた道子おばの耳に入った時は、

妹が和也に向かって何と言う口の聞き方だ、と怒鳴られていた。



その時は母が謝っていたが、姉が反省すると言う事は無かった。


母がすぐに庇っていたからだ。


僕はそんな姉の犯した事へのアキの復習の餌食。


アキの心も知らずに有頂天になっていたマリオネットの人形。


ヘロインが僕の体内に入り込み、その内には五感を狂わす。そして最後には… 

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