君に幸せの唄を奏でよう。



「…そう言えば、夏休みっていつからなんだ?」


突然、橘 奏が質問をしてきた。


「え…っ、明日からだけど」


突然、聞かれたので動揺しながら答えた。


「やっぱ、高校は早いな」


「橘 奏の所は、まだなの?」


「ああ。8月からだ」


橘 奏は、答えた。


「そうなんだ。確か、大学って休み長いわよね?」


「ああ。3ヶ月ぐらいあるな」


3ヶ月?!


「いいなぁ~。あたしも3ヶ月の夏休みほしーい!」


3ヶ月とか、もうパラダイスじゃない!


「いや、そんないいもんじゃない。レポートとか課題があるから面倒くさい」


「うわ…。大変ね」


大学生って、結構忙しいんだ…。


「それに、大学祭の準備もしないといけないから長くても短くても関係ない」


「大学祭っていつあるの?」


「11月の中旬だ」


11月の中旬か…。橘 奏の大学祭行ってみたいな。


だけど…


「……そっか。頑張ってね」


そんなこと言えない…。もし、行きたいって言って断られたら怖い…。


そもそも、憎いモノを持っている相手をわざわざ呼んだりしないわよね…。


今こうやって話してるのもだって、あたしがまだ橘 奏のケガを気にしていると思って、話を振ってくれたのも分かってた。


「…なぁ」


「なに?」


「もし、お前が…」


あたしが?


「……………悪い。なんでもない」


ズキン…。


「………そっか。大丈夫よ」


本当は、期待してた。


『もし、お前がいいなら大学祭来るか?』って。


でも、これはあたしの妄想。現実は違う。



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