君に幸せの唄を奏でよう。



「……じゃあ切るな。またな」


「…うん。また」


お互いに、電話を切った。


あたしは、仰向けになりながらベッドに転がった。


もう、掛かってくるはずのない携帯を握りしめたまま。


今は、あたしと普通に話してくれた。


-歌ノ話ヲシテナイカラ?


その話さえしなければ、橘 奏も普通なんだ。


今日は、ケガの事で電話をしてくれた。


治ってて、嬉しかった。


だから、もう橘 奏と会う事も電話をする事もない。


何故か、あたしは“寂しい”って思う。向こうは、せいせいしてるかもしれないのに…。


それを想うと、この前みたいに胸が苦しい。押し潰されそうな感じになる。


でも、これで橘 奏の事で悩む必要もなくなった。


お互い、これでよかったのかも…。


-本当ニ、コレデイイノ?


やっぱりダメ。結局、何も解決をしていない。状況だって、何も変わってない。


ただ、前より話せるようになっただけ。


もうこれで、本当に会えなくなる。


考えているうちに、頭が混乱してきた。


なんで、ここまで悩んでるんだろ…。


これじゃあ、まるで橘 奏の事が【好き】みたいじゃない。


あたしは、別に橘 奏の事なんて好きでも…嫌いでもない。


自問自答を繰り返しても、何も分からない。


ただ、妄想が広がるだけ。


ただ、一つわかる事は、このままじゃ“何も変わらない”


ただ、それだけの事。


意識が、少しもうろうとしてきた。


寝不足のせいで、睡魔が襲ってきた。


今日は、もう寝よ…。


あたしは、瞼(まぶた)を閉じて、そのまま眠りについた。



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