君に幸せの唄を奏でよう。



先輩は、掴んでいたあたしの腕を放し、掌に落としたお金を渡してくれた。

「はい。落ちてたよ」
「……ありがとうございます」

先輩に拾われ、お礼を言ったのが悔しい。

「物凄く嫌な顔してるね」

先輩が、目を細めニコニコとした笑顔で話す。

中学の時からそうだけど、先輩がニコニコと話しかけてくる時は、何を考えているのか分からない。ううん。想像もしたくない。

先輩のそういう所が、怖いし、好きじゃない。

「もう、あたしに話しかけないで下さい」

冷たい態度を取り、先輩を睨む。

「冷たいね」
「元々、冷たい人間なんです」

早く立ち去りたい一心で、会話を短く終わらせる。

これ以上、先輩と関わるのは嫌だし、ややこしくなる。

なんとしても、早くここから立ち去らないと…!

すると、先輩は何かを思い出したのか「ああっ」と、声をこぼす。

「もしかして、あの事で怒ってる感じ?でも、何で怒ってるの?」

先輩の無神経な発言に、我慢の限界が来た。

「怒ってますよッ!浩ちゃんに酷い事をしたのだって、許してないんですからッ!それに、先輩の気まぐれのせいで、ファンクラブに変な誤解を招いてしまったんですよッ!こっちが、どんなに迷惑したのか分かりますか?だから、もう二度と関わらないで下さいッ!」

怒りの感情にまかせて一気に喋ったせいで、はぁはぁ…と荒い呼吸を肩で繰り返す。

よし!やっと言いたい事が言えた!特に、あの事を。本当は、中学の時に言いたかったんだけど、常にファンクラブに見張られてたから、言えなかった。

もう、これだけ言ったんだから、二度とあたしに近づいてこないはず…!



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