君に幸せの唄を奏でよう。
辺りは薄暗かったけど、はっきりと見えた。
顔は小顔をでパッチリとした大きな茶色の瞳。髪はセミロングで茶髪。どちらかと言うと、栗色に近いかもしれない。
西崎丘高校の制服を着ていたから、高校生と分かった。その子は、俺に驚いてキョトンとした表情で見る。
俺はその姿を見ただけで、一瞬にして捕らわれてしまった。
この子が歌ってたのか……。
この子の姿を見て、何故か納得してしまう。
「う、歌っていいですよね。あたしの歌、どうでしたか?」
その子は、とても恥ずかしそうに顔を紅く染めながら聞いてきた。
その子の言葉を聞いた途端、俺の頭の中で何かが巡り廻る。
それは、何も知らず無邪気に歌を歌っていた【昔の俺】
今、目の前に居るこの子と【昔の俺】が重なる――――。
あーっ。なんだろ……。ものすごく――――イライラする。
そして、俺は答える。無邪気に聞いてくる、この子が腹立たしくて―――。
「歌か…。歌なんか大嫌っいだけど」
俺は皮肉を込めて答えた。案の定は、その子は何が起こったのか分からなくて呆然としていた。
それでも、俺はやめない。まだ言い続ける。
「……あぁ、感想だっけ?お前の歌を聴いていると、不愉快になる」
さっきよりも、強く憎しみを込める。
この子を見ていると、イライラする。そして、その無邪気さを傷つけたくなる……。
俺の口は、次々と勝手に喋り出す。
「それに…おゎッ!!」
突然、目の前がぐらついた。さっきまで、河原にいたのに気がつけば、突き飛ばされて浅瀬にいた。