君に幸せの唄を奏でよう。
「なにすん「もういっぺん言ってみなさいよ」
俺は、突き落とばされ“なにすんだ!”と言い返そうとしたが、言葉を遮られてしまった。
「あたしの歌が不愉快だって、もういっぺん言ってみなさいよッ!!」
女の言葉が、酷く俺の頭に響き渡る。俺は、浅瀬から起き上がって女と距離を置くように向かい合わせにに立った。
着ていた服は、女のせいで、びしょびしょになった。でも、そんな事はどうでもよかった。今は、イライラとした感情が高ぶっている。
「お前が聞いてきたんだろ。自分の歌は、どうだったって」
「……ッ!」
女は、図星を突かれたみたいで悔しそうに俺を見た。
「だから、俺はそれに答えただけだ」
坦々と低い声で、女を追い詰める言葉を吐き捨て続ける。
「じゃあ、何であたしの歌を聴いたのよ!?」
女に言われビクッと体全体が反応した。
「不愉快と思うのなら、あたしの歌を聴かないで帰ったらよかったのに!!」
「………」
その言葉に、何も言い返せれなかった。
確かに、女の言う通りにあのまま帰ればよかったものの、実際には歌声に惹かれて帰らなかった。
「なんとか言いなさいよ!!」
女は、顔を真っ赤にしながら問い続ける。
「………」
それでも、俺は何も言い返せなかった。今の俺は、ただいちゃもんをつけているだけだからだ。