君に幸せの唄を奏でよう。
「わ、分かってるわよ。放課後ダッシュで、職員室に行くわよ」
確かに、もうすぐしたらライブがあるから、早く曲を決めないと行けない。亮太の言う通り。悪い事しちゃったから謝ろう……。
「たく。本当世話のかかる奴だな。同じ事を繰り返すのが、お前のマイブームなのか?ちょっとは、こっちのことも考えろよ」
前言撤回。絶対に謝らない。てか、亮太が呆れながら言うから腹が立つ。
「うるさいわね!すぐ行くって言ってるでしょ!」
仕返しと言わんばかりに、亮太に向けて舌を出してべーッとする。
「んだと!?このバカ唄希!人が、せっかく心配してやったのに!」
逆ギレをしながら言う亮太に、頭の中で何かがキレる音がすると同時に、腹の底から怒りが沸きだす。
「誰が、心配してくれって頼んだのよ!このバカ亮太!」
「バカって言うな!てか、お前には感謝の気持ちってものがないのか!」
言い合いは激しさを増し、あたしと亮太は互いに睨み合う。
「まぁまぁ、2人共。少しは落ち着いたらどう?」
「唄希ちゃん落ち着いて」
火花が散る間に、少し髪がボサボサした浩ちゃんと、黒髪ロングの佳奈が入ってきた。
「おい浩平!まだ、決着がついてねぇんだ!」
「はいはい。落ち着きなよ」
岡田 浩平(オカダ コウヘイ)は、友達でもありバンド仲間。あたしと佳奈は、浩ちゃんって呼んでいる。
そんな浩ちゃんは、落ち着かない亮太の両脇に自分の両腕を通して暴れるのを押さえ込んでいた。
「そうよ!まだ、決着が着いてないのよ!今日の今日こそは…!」
「ダメだよ、唄希ちゃん!ここは堪えて~」
今度はあたしを落ち着かせようと、拳をつくっている右手を両手で押さえ込む相原 佳奈(アイハラ カナ)は、私の親友でもありバンド仲間。
「「ちょっ、まだ決着が…」」
「…いい加減にしなよ。君ら」
突然、低くてずっしりとした声があたし達を襲う。その声が聞こえる方に向くと、浩ちゃんの目が氷のように冷たくなっていて、あたし達を鋭く睨みつけていた。