君に幸せの唄を奏でよう。
「終わった?」
「終わった。次は?」
音夜が聞いてきた。
「じゃあ、シチュー入れるから運んで」
あたしは、シチューを皿に入れながら言った。
「分かった」
音夜は、シチューを運んでくれた。
あたしの家は、お母さんが他界してからみんなで協力している。
音夜もなんだかんだ言いつつ、手伝ってくれる。
「ただいま」
玄関からお父さんの声が聞こえた。
「「おかえり」」
あたし達は、お父さんに言った。
「ごめんな。帰ってくるの遅くなって」
高橋 達也【タカハシ タツヤ】
我が家の大黒柱。男ひとりであたし達を育ててくれた。
「ただいま、菜々子」
お父さんは、写真に写っているお母さんに話していた。
「ご飯直ぐ食べる?」
あたしは、父さんに聞いた。
「食べる」
「分かった。あっ。サラダ作ろうと思ってるんだけど、食べる?」
あたしは、お父さんに聞いた。
「食べる。お父さんが作るよ」
お父さんは、言ってきた。
「大丈夫。あたしも食べたいから作るし」
あたしは、自分で出来る事はするようにしている。
「じゃあ、お願いしようかな。着替えてくるよ」
「OK」
お父さんは、自分の部屋に行った。あたしは、サラダ作りを始めた。
「「「いただきます」」」
あたし達は、ご飯を食べ始めた。
「美味しい♪」
「さすが、父さん」
お父さんは、料理が上手い。お父さんの作る料理で、嫌いな物はない。
「そっか。ありがとう」
お父さんは、嬉しそうな顔をしていた。
「あっ。明日友達と遊ぶけど、いいかな?」
あたしは、お父さんに聞いた。
「いいよ。楽しんでおいで」
「ありがとう」
あたしは、父さんにお礼を言った。
「だんだん、菜々子に似てきたな」
お父さんは、あたしを見ながら言ってきた。
「そうかな?」
「俺は、似てないと思う」
音夜があたしにはっきり言ってきた。
「けど、お父さんから見たら菜々子に似てるよ」
「性格は?」
音夜は、お父さんに聞いてきた。
「性格は、元気な所とおっちょこちょいな所が似てる」
「へぇー。母さんって、おっちょこちょいなんだ。俺、あんま覚えてない」
音夜は、食べながら言った。
「…お前は、まだ小さかったからな」
シーン。楽しい食卓が静まりかえった。
なんとかしなくちゃっ!
「そ、そうだっ!お父さん、もうすぐライブがあるのよ」
あたしは、強引に話しを変えた。
「そうだったな。練習は、順調?」
お父さんは、あたしに尋ねてきた。
「うん。今日録音したやつ持って帰ってきたよ。聴く?」
あたしは、お父さんに聞いた。
「また後で聴かせてもらうよ」
お父さんは、嬉しそうな顔をした。
「うん」
「父さん、ギターの調律してもらっていい?」
音夜は、お父さんに聞いた。
「いいよ。後で、見るからリビングに持ってきてくれ」
「分かった」
あたしの家は、お母さん以外みんなギターを持っている。
幼い頃、お父さんがギターで演奏をしてくれたのがキッカケで、あたしも音夜もギターを弾くようになった。
ギターの調子が悪くなってもお父さんが直ぐに直してくれる。
「ごちそうさま。音夜よろしく」
「分かった」
あたしの家は、交代で片付けをしている。
あたしは部屋に戻り、リュックからCDを取り出し、リビングに向かった。
「ここにおいとくから」
あたしは、テーブルの上に置いた。