君に幸せの唄を奏でよう。
「鈴木先生に口答えするなんて、調子にのってるよね~」
ニヤニヤとした気持ち悪い表情で、あたしをバカにして、クスクスと笑い出す。
「お前ら、いつも唄希の悪口を「待って、亮太。行ったらダメ」
亮太が、3人組の所に怒りに行こうとしてくれたけど、あたしは止めた。
「だって、お前言われてるんだぞ!?」
亮太は肩を震わせながら怒っていた。心配も含めてあたしを守ろうとして3人組に怒っているのが伝わる。だからこそ---。
「亮太ありがとう。でもね、あたしが行かないと意味がないのよ」
「亮太、高橋の言う通りだよ」
浩ちゃんは、あたしの言葉を肯定してくれた。
「だけどッ!」
またしても、亮太は怒りながら言うけど、きっと浩ちゃんの言っている意味が分かっているからこそ、余計に大人しくしていられないんだと思う。
その気持ちは嬉しいけど、やっぱりあたしが行かないと意味がないと思う。だから---。
「浩ちゃんの言う通りよ。大丈夫だから」
亮太を落ち着かせる為に、笑顔で話す。 あたしの隣では、佳奈が心配そうな表情で見つめていた。
「大丈夫!ちょっと行ってくる」
あたしは、笑顔でみんなに言い残して3人組の所に向かう。
「分かる分かる!性格悪いって!絶対男の前で猫被るタイプよね~」
「へぇー誰が猫被ってるって?」
悪口に夢中になってケラケラと笑う3人組に近づき、当たり前の様に会話の輪に入る。
「もちろん、高橋さんに決まってるじゃな-?!」
やっと、あたしの存在に気付いた3人組は驚いてあたしの方へと振り向く。あたしは、3人組の前で腕を組み仁王立ちをする。
「毎回思うんだけど、そんなにあたしが気にくわないのなら、此処で悪口を言ってないで堂々と正面から言ったらどう?」
この3人組は、毎回あたしが何かをするたび気にくわないのか悪口を言う。しかも、女子ならではの嫌らしい方法で。まぁ、慣れてるから傷付いたりしない。ただ、この3人組のやり方が気にくわないだけ。
「はぁ?!あんたのその態度マジムカツク!性格悪いんじゃない?!」
このグールプのリーダーである二宮さんは、あたしに指を指しながら言い返す。
「悪いですけど、それが何か?これでも、あたしは自分の信念を通しているわ。貴方達みたいに、誰かと群がらないと人の悪口を言えないのと比べたらマシだと思うけど」
二宮さんの言葉に対して、ピシャリと冷たく言い返す。その効果か、3人組は少し動揺して口をつぐむ。少しきつめに言ったから、もう言い返して来ないはず。
「は、はぁーー?!私たち達が性格悪いわけないじゃん!鈴木先生にひいきにされてるからって、調子来がないでくれる?」
「そうよ、そうよ!」
「はぃい?!教科書で頭叩かれて、みんなの前で笑い者にされたのに、何処がひいきにされてるの?!」
って、思ってたら二宮さんの子分である久木さんと若宮さんに、訳分からない事を言われて頭が混乱する。
てか、ひいきにしてるんなら、もうちょっと優しく起こしてくれるわよ……!
「はぁ?!いつもいつも鈴木先生に構ってもらってるじゃない!それが、ひいきなのよ!」
「あれの何処が?!完全にイジめられてるけど?!」
え、なに?!みんなから見たら、あたしと鈴木先生はじゃれ合ってるの?!想像しただけでも恐ろしい……!
「だーかーら!それが構ってもらっているのよ!自覚してないから、余計にムカツク!」
えぇえぇぇぇ!なに、勝手に3人組から嫉妬されてるの?!てか、どんだけ鈴木先生LOVEなの?!凄く迷惑なんだけど!
「なんだかんだ言って、実は自覚してるんじゃない?で、わざと気付かない振りして鈴木先生に惚れさそうとしてるんでしょ?」
「マジ最悪!男に媚びる奴なんか嫌い!」
「だから、あたし達はあんたが嫌いなのよ!」
あたしの言葉は届かず、3人組の思い込みは激しさを増して、それぞれ言いたい放題に言う。
もう無理。我慢の限界……!
「だーかーら、あたしはそんな気もないし、なんでわざわざそんな面倒くさいことをしないといけないのよっ!あたしは迷惑してるの!」
堂々と胸を張って、自分の言いたい事を言う。こんな所で、引き下がったらまたややこしくなる。それに、やられたままなんてごめんよ。やられたらやり返す。
「はぁ?自分の事を棚に上げてなに言ってるの?全然、自分の性格が悪いって自覚してないじゃない!偉そうな事言わないでよね」
「「さすが、万里子!」」
リーダーの言葉を肯定するように、子分達は歓声を上げる。そして、3人組はざまぁみろと言わんばかりのドヤ顔を決める。
あ……面倒くさッ!!仕方ない。“あの手”を使うか。
「ふーん。そんな事を言ってもいいんだ?あたし知ってるの、貴方たちの秘密」
「はぁッ!?なにそれ!?」
あたしの言葉に反応し、リーダーは動揺を隠せない瞳(め)をしていた。子分達もアタフタと落ち着きがない。
効いてる。効いてる。
あたしは、3人にだけ聞こえるよにある噂を耳打ちをする。
「な、何でそれを知ってるのよ!?」
リーダーが、椅子から立ち上がり動揺して後ずさりをする。思った以上に効果抜群。この噂は適当に言っただけだったけど、まさかあなた達とは思わなかった……。でも、それはやっちゃいけないこと。ここで、自覚して反省をしてもらわないと。
「ねぇ、万里子どうすんの!?」
肝心のリーダーは、顔を真っ青にして硬直状態。特に、リーダーは効果抜群みたい。しばらくして、リーダーの硬直状態が解ける。そして、ギロリとあたしを睨みつけた。
「お、覚えておきなさいよ!綾香、志帆行くわよ!」
リーダーは、悔しそうな表情で立ち去り教室の扉に向かう。子分達も慌ててリーダの後を追いかけて教室を出て行った。
とりあえず、嫌みトリオ撃退に成功し、落ち着いたので亮太達のところに戻る。