君に幸せの唄を奏でよう。
「変な所ないわよね?」
あたしは、鏡の前でチェックをしていた。
ボーダーのTシャツに灰色のベストと昨日買ったサックス色のデニムのショーパン。
「髪も大丈夫ね」
生れつき、くせ毛がある。寝癖はついていないから大丈夫。
「 …って、なに張り切ってるのよ!」
鏡に映った自分自身に、思わず叫んだ。
なに気合いいれているのよ、あたし!たかが、携帯の為に会うだけじゃないっ!!
[~♪~♪~♪]
突然、電話が鳴る。
こんな朝早くから、誰だろ?お父さん達は、まだ寝てるし……。
「はい。もしもし」
あたしは、受話器を取った。
「もしもし、唄?」
「亮太?どうしたの、こんな朝早く?」
こんな時間帯から、電話が掛かってくるのは珍しい。
「…携帯見たか?昨日、メールしたんだけど」
亮太が、少し機嫌悪そうに聞いてきた。
「えっ?!」
ヤバっ!今、携帯ないのばれるッ!!ごまかさないとっ!
「い、今、携帯ないのよ!」
「はぁ?!なんでだよ?!」
亮太の驚いた声が、受話器ごしから響く。
「え~と、じ、自転車に乗りながら携帯をいじってて、落としてひいちゃったのよ。それで、今修理に出してるからないのよ」
あたしは嘘をついた。
「そうか。なら、仕方ないな」
どうやら、納得してくれたみたい。ふぅ…。セーーフ。
「もしかして、練習時間変わった?」
「いや、時間は変わってない。だから、その…」
亮太が、もごもごと何かを言っているから、聞き取れない。
「もう少し、大きな声で話して」
「その…練習まで時間あるから、ど、どこか行かないか?」
何故か、亮太は戸惑いながら、あたしを誘ってくれた。