君に幸せの唄を奏でよう。



「今から、用事があって出かけるのよ」
あたしは、やむを得ず断った。
「……そっか。なら、仕方ないな」
「本当にごめん」

もとはと言えば、あたしが携帯を落としたのが原因。罰が悪かった。

「謝るなよ。急に誘った俺が悪いんだし」
「亮太は悪くないよ」
あたしは、申し訳ない気持ちで言った。

「じゃあ、また後で」

亮太が、話しを振ってくれた。

「うん。また後で」

あたしは、電話をきった。

やばっ!もうこんな時間!

部屋に戻り、学校用のリュックに必要な物を入れた。

本当は、いつも使っているお気に入りのリュックで行きたかったけど、ナンパ達にリュックをぶつけたので洗濯中。

急いで1階に下り、お母さんの所に行った。

「お母さん、行ってきます!」

あたしはそう言い、待ち合わせのカフェに向かった。

-------


あたしは、カフェに着いた。さっきから、心臓がドキドキと脈を打ってうるさい。

なに緊張しているのよっ!落ちつくのよ、あたし!軽く深呼吸をし、ドアに手を掛けた。

「さっきから、何をやってるんだ?」
「ぎゃ?!」

突然、背後から声をかけられたので、あたしは慌てて後ろに振り向いた。

「びっくりするじゃないっ!橘 奏!」

なんて呼ぼうかと悩んだ末、フルネームで呼ぶことにした。

「お前が、いつまでもつったっているからだろ」

うっ…言い返せない…。

「まぁ、丁度よかった。これ」

橘 奏は、あたしの携帯を渡してくれた。

「あ、ありがとう」

あたしは、携帯を受け取りホッとした。



< 75 / 284 >

この作品をシェア

pagetop