君に幸せの唄を奏でよう。
「じゃ、俺帰るから」
「ま、待って!」
とっさに橘 奏の服の裾を掴んだ。橘 奏は、不思議そうにあたしを見る。
「その…お礼したいの!」
「お礼?」
あいつは、びっくりしていた。
「携帯…拾ってくれたからお礼したいの」
もう、借りを作りたくないというプライドもある。
「別に、礼を言われるほどの事はしてない」
橘 奏は、素っ気なく答えた。
「その…友達を助けてくれたお礼もしたいの!だから…!」
あたしは必死に言う。
「……なんでもいいんだな?」
橘 奏は、確認をする様に聞いてきた。
「う、うん。あたしに出来る事なら…」
何故か、再び緊張してしまった。
「じゃあ…アイスコーヒー飲みたいから付き合ってくれ」
えっ?
あたしは、橘 奏の言葉を聞きポカンとしてしまった。
「男1人が、こんなオシャレな店に入れないし」
「そ、それじゃ、お礼にならないじゃないっ!」
あたしは抗議した。
「なんでもいいんだろ?」
「う…」
確かにそう承諾はしたけど…。
「なら、俺はこのまま帰るけど」
「ダメ!」
あたしは、少し大きな声を出してしまった。
「…じゃ、決定で。中に入るぞ」
橘 奏は、ドアに手を掛けた。
「ほら」
橘 奏は、ドアを開けてくれた。
これじゃ、意味がないじゃない……
あたしは、そう思いながら店の中に入った。
どうしよ…
あたしは、メニューと睨めっこをしている。
飲み物は決まっているが、ケーキの種類が豊富で何を頼もうか悩んでいる。
橘 奏をチラッと見た。橘 奏はメニューを見ていた。