君に幸せの唄を奏でよう。



まだ、不思議な感じがする。

こうやって、座って普通に話しをしてるなんて…

あたしは、昨日から“ある事”を聞きたかった。

初めて会った時に
『歌か…。歌なんか大ッ嫌いだけど』
『お前の歌を聴いていると不愉快になる』
『だけど、歌が好きな奴もいれば…大ッ嫌いな奴もいるんだ』

って、言ったのを聞きたかった。

どうして、歌が嫌いなの?あたしの歌を聴いて不愉快と思ったの?

なんであの時、哀しい顔をしたの?

あたしは、ずーっと考えてた。

でも、聞かないと分からない。やっぱ、聞くしかない。

「た…橘 奏っ!」

あたしは、呼んだ。橘 奏は、不思議そうな顔をしていた。

「聞きたい事があるんだけど…」

何故か、あたしは緊張をしていた。

「なんだ?」
「……どうして、歌が嫌いなの?」

あたしが尋ねた途端、さっきまで笑っていた橘 奏の顔が、固まった。

「…初めて、あの河原で会った時に“歌か…。歌なんか大ッ嫌いだけど”って言ったでしょ?だから-」

ダンッ!!

橘 奏が突然、テーブルを叩いて立ち上がった。

「………歌が嫌い。ただ、それだけの理由だ」

橘 奏は恐い顔をして、あたしを睨みながら言ってきた。

あたしは、思わずひるんでしまった。

「……お前を助けたのは、たまたまだ。もう、お前と会うことはない」

橘 奏は、そう言いレジに向かい、会計を済ませて店を出て行った。

あたしは、1人取り残された。

…な、なんなのよッ!!あんな言い方しなくてもッ!!

あたしは、残っていたアイスコーヒーを一気に飲んだ。

さっきまで、優しかったくせにッ!!----

意味分かんないッ!!



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