君に幸せの唄を奏でよう。
【奏 Side】
俺は、イライラしていた。
あいつに歌のことを聞かれたからだ。
そもそも、あいつと俺が居る“理由”がない。本当は、携帯を返して帰るつもりだった。なのに---
『その…友達を助けてくれたお礼もしたいの!だから…!』
あいつが必死で言ってきたので、なぜか断れなかった。
結果、自分から言った。
あいつと少し話して分かったことがあった。
笑ったり、怒ったりして忙しい奴で、おもしろくて---
引っ越ししてきた理由を聞かれたときは、焦った。
言いたくなかった---。
あいつは、なにかを察知したらしく話を変えたのを俺は、知っていた。
別に話しをして嫌だと思わなかった。
“あれ”を聞いてくるまでは---
『……どうして、歌が嫌いなの?』
ドクン--。
『…初めて、あの河原で会った時に“歌か…。歌なんか大ッ嫌いだけど”って言ったでしょ?だから-』
ドクンッ!!
気がついた時には、テーブルを叩いて立っていた。
『………歌が嫌い。ただ、それだけの理由だ』
俺は、睨みながら答えた。あいつは、おびえた顔をしていた。
『……お前を助けたのは、たまたまだ。もう、お前と会うことはない』
俺はそう言い“逃げたんだ”---。あいつが、悪くないのは分かっていた。
答えるのが怖かったんだ。“それ”に触れてほしくなかった----。
だけど、もう会うことはない。いや…俺は、怖いんだ。
あいつが、純粋に俺を見てくるのが----。
まだ、1時間半もあるのか……。
俺は、携帯を見ながら思った。
少し、早いが行くか。
気持ちを切り替えれないまま、俺はバイトに向かった。