君に幸せの唄を奏でよう。



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「お疲れ様です」

バイトに支障も出ず、無事に終わった。俺は、みんなに挨拶をして、店を出た。

店長が、時間を延ばしてしまったというお詫びで、このカフェ特製の抹茶シフォンケーキをもらってしまった。

申し訳ない気持ちもあったが、ありがたく受け取り家に向かった。

「ねぇ、RINAの曲聴いた?」
「聴いた聴いた」

信号を待っている時、20歳ぐらい女2人組の会話が聞こえた。

東京と違い、夜に出歩く人が少ないので、聞きたくなくても会話が聞こえてくる。

信号が赤になり、俺は渡った。

さっきの会話を聞き、俺は昔を思いだした。

俺も昔は、好きな歌手がいた。友達や仲間と話しては、盛り上っていた。

だけど--- 今は、もう話しをしたりしない。

“あの日”から俺は、変わった。


歌が、大好きだった【あの頃の俺】歌が憎くて仕方ない【今の自分】

最近は、自分のことをまるで他人事みたいに考えてしまうようになった。

それに対しては、別になにも思わなかった。

“あの日”から初めて、歌が憎くなった時、ずっと、ずっとある事を思っていた。

【どうして、この世に歌と音楽があるのだろう】

と、最初の頃は恨んでいた。誰かにそう聞きたかったのかもしれない。

でも、成長していくにつれて恨んでも無駄だと気づいた。

【この世の半分が、歌と音楽で出来ている】

ただ、それだけの事なんだ。

それでも、俺は“憎いんだ”。

気がつけば、無意識のうちに拳をつくっていた。

………早く帰ろう。


俺は、早歩きで帰った。


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