君に幸せの唄を奏でよう。


「で、“深~~い理由”は?」

放課後。あたしは、職員室に行き、先生に質問されている。

「いや、その……悩み事がありまして」

あたしは、目を合わせるのが怖かったので、目をそらしながら言った。

「ほぉー。そうか。お前にも悩み事があるのか…」

先生が少し驚いた顔をして言ってきた。

…先生は、あたしの事をなんだと思ってるんですか?

怒りを通りこし、逆に聞きたくなった。

「まぁな。お前らの歳は、いろいろとあるだろう…だけど、悩むって事はいい事なんだぞ」

なんか急に語り出したよ、この人ーーーっ!!

「……いい事なんですか?」

あたしは、恐る恐る先生に尋ねた。

「そうだ。悩む事は、前に進もうとしているからだ。最近の奴らは、すぐに諦め、楽な道へ逃げようとする」

先生が、少しため息をつきながら言った。

「だから、悩む事は、無駄じゃない。それと向き合おうとしている証拠なんだ」

先生の言っている事が、カッコよすぎて、言葉が出なかった。

さすが、大人だなって思った。

それにしても、あたしの目の前に居る人は、あの鈴木先生なの?

「…お前、今なにを考えていた?」

先生が、睨みながら言ってきた。

「そんな!全ーーっ然、なにも考えていませんよっ!」

エスパーだっ!恐るべし、鈴木先生……!!

「……まぁ。いいだろう。今後は、気をつけろよ」
「はい。失礼します」

あたしは、先生にお辞儀をし職員室を出て行った。

亮太たちが待っているから急がないと。

あたしは、早歩きで玄関に向かった。先生が言ってくれた言葉を考えていた。

あたしが、橘 奏の事で悩んでいるのは“いい事”

あたしが、悩む事に意味があるって事---?何故----…?

あ-…頭の中がぐるぐるする。

あたしは、そう思いながらもみんなの元に向かった。


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