君に幸せの唄を奏でよう。
【亮太 Side】
やべ…………。
俺は、奮(ふる)えた。もちろん、唄の“歌声”に-----。
こいつの歌声は、他の奴らとは全然違う。
いや、比べる以前の問題だ---。
俺は、いつも作曲をする時は唄をイメージしながら考えている。
こう歌ってほしい-
こんな風に歌わせたい----
それらを込めて、俺は曲を完成させる。
それを、唄(あいつ)に歌ってもらうと俺が思っていた想像を遥かに超える。
俺が見えなかった曲の世界をあいつは、歌って見つける-----。
唄の歌声は、綺麗でブレがなくて頭に直接響く。
一度聴いたら頭から離れなくなる-----。
だから、ライブに来る観客も“それ”をもう一度聴きに来るんだ。
いや、“虜”(とりこ)になるんだ----。
俺を含め、ここに居るメンバー全員が既にお前の虜になっているんだ。
歌い方によって、こいつはいくらでも変わる。
少し低い声で歌えば、少年っぽい声になる。
高い声で歌っても、声の裏声が綺麗。
ヴォーカリストなら誰もがうらやましがる声(もの)を全て持っている。
さっき、観客の中て一部震えている奴らがいた。
お前は、どうせ『亮太たちの音楽を聴いて震えている』って思っているんだろうけど
お前の“歌声”に震えていたんだ----。
今は、虜になり笑顔でお前を見ている。
……って、お前は気づかないか。
お前は、いつも『あたしの歌声を聴いて誰かが幸せになってくれたらいい』って言ってるけど
お前は、たくさんの人達を幸せにしているんだ----。
お前は、最高の【歌姫】だ。
俺は、横で歌っている唄を見ながら思った。
そして、再びライブに集中した。