『あなた』へ
破滅への足音
彼が転勤になって少し過ぎた頃、働いているお店に最近九州から来たというヤクザ風の人がやってきた。


歳は３３才くらいで名前は佐藤(仮)。



その人は羽振りがよく、私のことを気に入ってくれて毎日の様にお店に会いに来てくれた。



『彼氏おるの？』



基本的に隠し事はしたくない性格だが、職場的に隠して働いていた。



『いますよ』



でも正直に言っておいた方が良さそうだと思った。



『別れて俺と付き合わん？』




それは無理ですと笑いながらごまかした。




『まぁ、考えといてよ』





そんな感じで数週間が過ぎた。



その間も佐藤さんはプレゼントをくれたり、ご飯を食べに連れてってくれたりお店に通ってくれた。


そして、ある日いつも一緒にいる２２才くらいの後輩と来店した。



後輩は顔に傷があった。



何となく聞いちゃいけない感じがして聞かなかった。



いつもと何かが違う、そんな空気を察知した私は嫌な胸騒ぎがした。



何か２人で話してからいきなり後輩を殴り始めた。



お店の中だったのでとりあえず止めに入った。



２人は外に出て数分後佐藤さんだけが戻ってきた。



『すまんのぉ、店の中で迷惑かけてしまって』



『それはいいんです、あの後輩の方は？』



『あいつの知り合いがうちで働きたいゆうからわざわざ面接に行ったら１時間も遅刻したあげく来なくてな。

連れて来いゆったら、勘弁してくださいってゆうからそれはできへんってゆーたんじゃけ』



そんなことで？私には理解不能だった。



世の中にはよくわからないことが山ほどある。



『それで？』



私が聞いたと同時に、佐藤さんの電話が鳴る。



電話に出ると凄い剣幕で相手と口論になった。



『ちょっとあいつ捕まえてくるわ』



(えっ？)



そう言って佐藤さんは飛び出して行った。
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